語学学校・オンラインレッスン
語学学校
利点:対面で学べます。会話の場面を設定して教室全体を使い、表情や身振り手振りから言葉を推測・理解したり、言い回しの練習ができます。外国語に不慣れな人、特に初心者には、オンラインによる画面越しの会話より練習しやすいです。意思疎通が成り立たない場合、視覚の情報(表情、身振り手振り、置かれた状況や雰囲気)を通して理解しようとしたり、自分の言葉を伝えようとするので、この点はオンラインレッスンより優れています。文法・語法に関する説明と質疑応答も対面の方がやり取りしやすいです。対面の会話とインターネット回線を通した発音では聞こえ方に差異があるので、通信状態に左右されるオンラインレッスンより安心です。生徒の習熟度に合わせた一貫したカリキュラムも大きな強みです。
欠点:学校までの距離、レッスン料金、曜日・時間帯次第で通える学校が限られる、または通える学校がない。
注)教室でのレッスンとオンラインレッスンの両方を行う学校も増えています。受講するコースの講師が限ら
れており、相性が合わない・教える技量に満足いかないという理由で講師を変更してもらえるかは学校次第です(この点は入学前に確認しましょう)。一般的にオンラインレッスンより割高です。
オンラインレッスン
インターネット環境があればどこでもレッスンを受けられ、学習者に合わせたマンツーマンレッスンが可能です
(まともに教えられる技量があればですが)。一対一の自由形式なので、学びたいことに焦点をあてて練習でき
ます(特に中級者・上級者向け)。登録制のオンラインサービスでは、数十人、数百人の講師から選べ、変更も
できます。受講する曜日と時間帯も選びやすいです。例えば、夜遅くに対応できる講師が日本にいない場合は、
日本より時間が遅れている海外在住の講師に頼むことができます。海外の語学学校や企業(主にIT関連)もオン
ラインレッスンを提供しており、中にはウェブサイトに日本語版を設けているところがあります(私はその類の
翻訳案件に携わったことがあります)。1レッスンあたりの料金は数百円から数千円と幅広く、語学学校の相場
よりはるかに安いところが多いです(料金の違いについては後で述べます)。
注意点:外国語として教える専門教育や資格を講師登録の条件にしていないところがあります。ウェブサイトで
講師紹介と講師募集(採用条件の内容)のページを見ることをお勧めします。専門教育を受けた人は生徒のレベ
ルや要望に応じたレッスンを行い、疑問に対してしっかりと説明できます。しかし、母語を勉強していないネイ
ティブスピーカーや教えるための専門教育を受けていない人は会話の練習相手をするだけで、「教える」という
レベルではありません。これについてはこちらのページで詳しく説明しています。
レッスン料金の違い
一般的に語学学校もオンラインレッスンも月額制または回数制の定額で、前者の方が割高です。料金に大きな差
がある要因は、ビジネス形態と経費の違いにあります。語学学校の事業は当然のことレッスンであり、収益源は
レッスン代にかかっています。大手の学校には講師のほかに、入会手続きやスクールマネジメントを担うスタッ
フがいます。さらに、学校の家賃、光熱費と備品代も要ります。それらを賄うとなると、必然とレッスン料金や
入学金(入会金)や教材費に転嫁するしかありません。
一方、オンラインレッスンの運営会社の多くが、外国語や教育関連のサービス、または語学とは無関係の多種多
様な事業を中心にしています(それぞれのウェブサイトに記載されている「運営会社」や「企業情報」を調べる
と分かります)。レッスン以外の事業の収益でオンラインレッスンを提供するウェブサイトやプラットフォーム
の維持費を賄えるのです。講師はレッスンごとに報酬が支払われる在宅のフリーランス契約なので、語学学校の
ような時給または固定の月給を支払う必要がありません。英語に関しては、日本より物価が安い国に住んでいる
人(特にフィリピン人)を講師として採用しているのも安さの一因です。
初心者が注意すること
外国語学習自体が初めての人や初級の学習者は、語学学校またはオンラインレッスンを選ぶ際は要注意です。
どちらにしても、講師が日本語が全く分からない・話せない場合は、相手が言うことを自力で理解できるように
なるしかありませんが、とうてい容易なことではありません。言葉が通じないことに大きなストレスを感じない
人には支障はないですが、理解できないことが苦痛になると、レッスン後に予習・復習する意欲が出ない可能性
があります。英会話学校通いが長続きしなかった人達の話を直接聞いたことがありますが、言葉が通じないこと、日本語で考えて学習できなかったことが学校をやめた理由でした。
外国語を習うときは、オンラインレッスンの講師が日本語を話せるか、語学学校には日本語を話せる講師がいて、レッスンで日本語を使って良いか、またはバイリンガルの日本人講師が担当するかを事前に尋ねることをお勧めします。これを確認してから、対面授業・グループレッスン・個人レッスンという形態、通学時間、ネット環境などを吟味して決めると良いでしょう。
「日本語を使わないレッスン。英語が自然に身につく」という類の謳い文句を多々見聞きしたことがありますが、初心者に当てはまるとは言い難いです。全く、またはほとんど分からない言語のみでどれだけ話しかけられても早々理解できるようにはなりません。レッスンで理解できなかったことは日本語を通して理解する必要がありますが、何が理解できなかったかすら分からなければお手上げです。しかも、ネイティブスピーカーが日本語を理解できなければ、あなたが相手の言うことを自力で理解し、話せるようになるしかありません。その行為は赤ちゃんや子供が親、家族など周囲の人との会話を通して母語を獲得するのと同じですが、大きな違いがあります。
母語が形成されるまでは、言葉が分からなくとも、それが使われる状況や文脈に何度も触れ、意味や仕組みを
深く意識せずに自然に身につきます。しかし、母語を獲得してから他の言語(外国語)を習得する場合、生活
に最低限必要な言語力が身についている年齢(特に10代半ば以上)は、見聞きする単語や言い回しを母語に置
き換えられるかを考え、置き換えられない(理解できない)時点で思考停止に陥ります。母語が起点になるの
で、外国語は自然に習得できません。一方、母語がまともに形成されていない幼児は、分からない外国語を見
聞きしても、それを比べるものがないので、思考停止することなく理解しようとするか、深く考えずに聞き流
します(低年齢ほど外国語を習得するのが早いのはこのためです)。
外国語大学でもネイティブ講師による、日本語を一切使わない授業が行われますが、それとは別に日本人によ
る文法・読解の授業があるので、初めて学ぶ人もネイティブ講師の授業を理解できるようになります。
以上のことから、初心者は日本語が分かるネイティブ講師、バイリンガルの日本人講師のどちらか、または双方
から習うのが望ましいでしょう。