ネイティブ講師について
外国語は母語話者(ネイティブスピーカー)に習うのが良いというのは理にかなっていますが、話す・聴く・
書く・読むの四技能を本格的に習得するには、ネイティブなら誰でも良いという訳ではありません。留学、検
定試験の受験、現地での就労など、何らかの目的があるなら尚更です。語学学校や個人レッスンの講師探しで
参考になる目安を二つ挙げます。
一つは、あなたが学ぶ言語を「外国語として教える技術」を習得している人、対象言語の教師養成課程を修了
している人です。英語は TESOL(Teaching English to Speakers of Other Languages・英語を母語としない人への英
語教授法)、TEFL(Teaching English as a Foreign Language・外国語としての英語教授法)、フランス語は FLE(Français comme Langue Étrangère・外国語としてのフランス語)があります。これらは日本語を学ぶ外国人向
けの「日本語教師」に相当します。
もう一つは、「外国語」として日本語の会話と文法を学び、しっかりとした日本語を話し、書ける人です。
例を挙げると、自国の大学で「日本語」を専攻した人です。日本人との付き合いで自然と日本語を習得した
人ではありません。日本語の仕組みを理解しているので、本人の母語と比較しながら説明することができます。
ネイティブの講師や友人から習った経験で言えるのは、どのような教材を使うか、どのような練習をするかが
教える人によって違っても、専門教育を受けている人や母語をしっかり勉強している人は、言葉の意味と仕組
みを理解しており、状況や文脈に適切な言葉遣いを理論に基づいて説明できるということです。
全くの初心者が教える人の技量を見極めるのは容易ではないでしょうが、分からないことや疑問に思うことを
尋ねて、まともに説明できるかを見ると良いでしょう。特に、意味が同じような表現や単語に関する質問が良
いでしょう。「まともな説明」とは、言い回し、語彙の使い方、意味(ニュアンス)の違い、的確な使い分け
を理解できるように説明することです。
分かりやすいように、外国人に日本語を教えるとしましょう。会話の練習相手に日本語の言い回しや文章の書き方について質問されます。例えば、「彼は欠席です」と「彼が欠席です」の「は」と「が」の違いは何ですか。この二つの助詞はどのように使い分けますか。的確に説明できず、「そういう決まり」、「この場合はこう言うのが自然」、「どちらもあまり変わらない」という答えで相手は理解できるでしょうか。
これを読むと、「ネイティブスピーカーとは会話を練習するだけなので文法は関係ない」、「会話をすると自然に覚える」と思う人がいるかもしれません。実際に、日本では受験偏重の英語教育のせいか、次のような初心者の声を見聞きしたことがあり、私が外国語を教えたときにも言われたことがあります。
話せるようになるには会話の実践は欠かせませんが、言語は文法(単語、文のつなげ方)と語法(単語の使い方)で成立しているので、これらに関する知識と理解も必要です。どのように表現すれば良いか分からない、言いたいことが相手に伝わらない、相手の言うことが分からないのは、日本語と異なる文法や、その言語ならではの特徴に直面しているということです。単語を並べるだけで通じることもありますが、伝わらないときは正確な文法や単語の使い方の知識が必要になります。読み書き・話す・聴くの四技能は別物ですが、学ぶ内容に変わりはありません。異なるのは、読み書きと会話のどの方法で表現や単語を学ぶかということです。この学習に対応できるのが、冒頭で述べた専門教育を受けた人です。日本人なら誰でも日本語を教えることができる訳ではないのと同じで、外国語もネイティブスピーカーからしっかりと学べるという保証はありません。
多くの人、特に外国語を全く知らない人や外国語を始めて学ぶ人には、下の思い込みがあります。
特に一つ目めが顕著で、日本の小学校から高校で日本語を「言語」として教える授業がないことが影響していると思われます。ヨーロッパでは、日本の「国語」に相当する「文学・読み物」の授業とは別に、文法を学ぶ「言語」という授業があります。分かりやすくいうと、日本の受験偏重と言われる文法に重点を置いた英語の授業のようなものです。日本人が英語・外国語学習で苦労する要因の一つに、日本語の仕組みを理解しながら習得しておらず、英語の文法・語法や言葉の意味や概念を日本語と比較する術を知らないことが挙げられます。日本語の語彙や言い回しの意味の差異を意識することなく、日々の体験を通して年齢とともに理解するようになり、無意識に使い分けているので、外国語も同じく、会話に文法は必要なく、ネイティブスピーカーと会話さえすれば身につくと思ってしまうのです。
二つ目は、「言葉は自然と覚える」という考えに、多くの日本人が「練習の数をこなせば出来るようになる」と
いう理論を軽視した根性論に慣れきっているので、会話の練習で間違いの指摘と訂正をするだけのことを「教え
る行為」と勘違いするのです。因みに、この考え方は外国語を習う人に限らず、外国人の日本語学習の手伝いを
している人にも共通しており、間違いの訂正をして反復練習すれば身につくと思い込んでいる人が多いです。
しっかりとした語学力をつけるには、「なぜ間違いなのか」、「なぜこちらが正しい、または相応しいのか」と
いう問いに対する的確な説明と理解が欠かせません。まともな説明が伴わない指摘と訂正は「教える」のではな
く、間違いに気づかせるだけです。
ネイティブスピーカーから習いたい人は、何のために学ぶのか、その目的や目標達成にはどのような人から習う
のが望ましいのかをじっくりと考えてみましょう。そうすると、その言語をしっかりと学習した人、専門教育を
受けた人が必要か、または単なるネイティブスピーカーでも支障がないというのが見えてくるでしょう。
書く・読むの四技能を本格的に習得するには、ネイティブなら誰でも良いという訳ではありません。留学、検
定試験の受験、現地での就労など、何らかの目的があるなら尚更です。語学学校や個人レッスンの講師探しで
参考になる目安を二つ挙げます。
一つは、あなたが学ぶ言語を「外国語として教える技術」を習得している人、対象言語の教師養成課程を修了
している人です。英語は TESOL(Teaching English to Speakers of Other Languages・英語を母語としない人への英
語教授法)、TEFL(Teaching English as a Foreign Language・外国語としての英語教授法)、フランス語は FLE(Français comme Langue Étrangère・外国語としてのフランス語)があります。これらは日本語を学ぶ外国人向
けの「日本語教師」に相当します。
もう一つは、「外国語」として日本語の会話と文法を学び、しっかりとした日本語を話し、書ける人です。
例を挙げると、自国の大学で「日本語」を専攻した人です。日本人との付き合いで自然と日本語を習得した
人ではありません。日本語の仕組みを理解しているので、本人の母語と比較しながら説明することができます。
ネイティブの講師や友人から習った経験で言えるのは、どのような教材を使うか、どのような練習をするかが
教える人によって違っても、専門教育を受けている人や母語をしっかり勉強している人は、言葉の意味と仕組
みを理解しており、状況や文脈に適切な言葉遣いを理論に基づいて説明できるということです。
全くの初心者が教える人の技量を見極めるのは容易ではないでしょうが、分からないことや疑問に思うことを
尋ねて、まともに説明できるかを見ると良いでしょう。特に、意味が同じような表現や単語に関する質問が良
いでしょう。「まともな説明」とは、言い回し、語彙の使い方、意味(ニュアンス)の違い、的確な使い分け
を理解できるように説明することです。
分かりやすいように、外国人に日本語を教えるとしましょう。会話の練習相手に日本語の言い回しや文章の書き方について質問されます。例えば、「彼は欠席です」と「彼が欠席です」の「は」と「が」の違いは何ですか。この二つの助詞はどのように使い分けますか。的確に説明できず、「そういう決まり」、「この場合はこう言うのが自然」、「どちらもあまり変わらない」という答えで相手は理解できるでしょうか。
これを読むと、「ネイティブスピーカーとは会話を練習するだけなので文法は関係ない」、「会話をすると自然に覚える」と思う人がいるかもしれません。実際に、日本では受験偏重の英語教育のせいか、次のような初心者の声を見聞きしたことがあり、私が外国語を教えたときにも言われたことがあります。
- 文法=読み書きで、話す・聴くという会話には関係ない。
- ネイティブ講師と話をできれば良い。
- 会話をすると、文法もニュアンスの違いも自然に分かるようになりますよね?
話せるようになるには会話の実践は欠かせませんが、言語は文法(単語、文のつなげ方)と語法(単語の使い方)で成立しているので、これらに関する知識と理解も必要です。どのように表現すれば良いか分からない、言いたいことが相手に伝わらない、相手の言うことが分からないのは、日本語と異なる文法や、その言語ならではの特徴に直面しているということです。単語を並べるだけで通じることもありますが、伝わらないときは正確な文法や単語の使い方の知識が必要になります。読み書き・話す・聴くの四技能は別物ですが、学ぶ内容に変わりはありません。異なるのは、読み書きと会話のどの方法で表現や単語を学ぶかということです。この学習に対応できるのが、冒頭で述べた専門教育を受けた人です。日本人なら誰でも日本語を教えることができる訳ではないのと同じで、外国語もネイティブスピーカーからしっかりと学べるという保証はありません。
多くの人、特に外国語を全く知らない人や外国語を始めて学ぶ人には、下の思い込みがあります。
- 言葉は自然と覚える。
- ネイティブスピーカーなら誰でも教えることができる。
特に一つ目めが顕著で、日本の小学校から高校で日本語を「言語」として教える授業がないことが影響していると思われます。ヨーロッパでは、日本の「国語」に相当する「文学・読み物」の授業とは別に、文法を学ぶ「言語」という授業があります。分かりやすくいうと、日本の受験偏重と言われる文法に重点を置いた英語の授業のようなものです。日本人が英語・外国語学習で苦労する要因の一つに、日本語の仕組みを理解しながら習得しておらず、英語の文法・語法や言葉の意味や概念を日本語と比較する術を知らないことが挙げられます。日本語の語彙や言い回しの意味の差異を意識することなく、日々の体験を通して年齢とともに理解するようになり、無意識に使い分けているので、外国語も同じく、会話に文法は必要なく、ネイティブスピーカーと会話さえすれば身につくと思ってしまうのです。
二つ目は、「言葉は自然と覚える」という考えに、多くの日本人が「練習の数をこなせば出来るようになる」と
いう理論を軽視した根性論に慣れきっているので、会話の練習で間違いの指摘と訂正をするだけのことを「教え
る行為」と勘違いするのです。因みに、この考え方は外国語を習う人に限らず、外国人の日本語学習の手伝いを
している人にも共通しており、間違いの訂正をして反復練習すれば身につくと思い込んでいる人が多いです。
しっかりとした語学力をつけるには、「なぜ間違いなのか」、「なぜこちらが正しい、または相応しいのか」と
いう問いに対する的確な説明と理解が欠かせません。まともな説明が伴わない指摘と訂正は「教える」のではな
く、間違いに気づかせるだけです。
ネイティブスピーカーから習いたい人は、何のために学ぶのか、その目的や目標達成にはどのような人から習う
のが望ましいのかをじっくりと考えてみましょう。そうすると、その言語をしっかりと学習した人、専門教育を
受けた人が必要か、または単なるネイティブスピーカーでも支障がないというのが見えてくるでしょう。